第八回
2006年03月07日
 
 中国へと渡ると、今回、Mr−Tは先に上海入りをしており、常宿にしているホテルで待ち合わせとなりました。
我々は、私とMr−Oの二人で早々にチェックインを済ませ、一階の喫茶でMr−T,金さんと合流し、4人で打ち合わせに早速入りました。

 私が調査資料を見せながら、陳さん、黄さんの空港プロジェクトでのポジションや身元の調査報告を彼らに伝えておりましたところ、Mr−Tも金さんも「そんなことは無い。彼らは実際に空港の人で、プロジェクトも本物だ! 総研の調査が間違っている!」と口を揃えて言いました。
しかし、誰がどう考えても、これだけ筋の通った報告をしている総研の調査を信用するのは必然的じゃないでしょうか。ところが、彼らは自らの主張を変えることは無かった為、直接総研に行って、詳しく説明をしてもらうことにしたのでした。

 約束の時間に、私はMr−O、Mr−Tとで総研の上海事務所に行き、話を始めようとしたときに金さんが慌てた様子で会議室に入ってきました。
第7回で書いたような調査報告書の内容を中国語でMr−Tと金さんに説明をしている間、二人は首をかしげながら聞いておりました。

 一通り説明が終わった後、Mr−Tはなにやら契約書や、証明書のようなものを出して、総研の副社長に「これやこれもあるのだから真実である」と、冷静な口調で自分の主張を述べておりましたが、総研の副社長は「中国ではそのようなものは簡単に偽造することができるし、もしそれが本物だと言うのであればこちらで調査させていただければ直ぐにわかります。 それをお見せいただいたからといって裏づけが無ければ何の証明にもなりません。もし本当だと言うのであれば、本人たちをここに呼んで頂き、全てを公表してもよろしいですか?」と牽制すると、 それに対して、Mr−Tはまだまだ冷静な口調で「そういわれましても、私たちは本当のことだと信じています。」と言い、 金さんも、「私も、公安(入管)の人間だから、彼らのことは知っているはずだ」と荒げた口調で言い返していました。
しかし、総研の副社長は作戦なのか口調を荒げながら中国語で二人をまくし立てましたが、結局彼らは顔色も変えずに「そんなことは無い」との一点張りでした。
そのままでは埒が明かないので、私個人の意見で、「このプロジェクトからは降りる。」と宣言してその場を解散しました。

 夜にもう一度Mr−T達と話し合うこととして、彼ら二人を帰して総研の副社長と私、Mr−Oで打ち合わせをしました。その際、総研の副社長から「Mr−Tは只者では無いですね。私があれだけ突き詰めても顔色ひとつ変えずに対応しているところを見ると彼の後ろには、何かあるかもしれません。中国人だったら必ず怒るような事を言ったんですが、全く動じませんでしたから・・・」と、Mr−Tに対して更に警戒する必要を説かれました。
それから更に「彼の生年月日と本名とを教えてもらえれば調べますよ。」と言われましたが、まぁ少なくとも彼らとのプロジェクトは全てのキャンセルにするつもりでいましたので「彼らの身辺調査については、あわてなくても良いですから・・・」と伝え、その場を後にすることにしました。

 ホテルに帰ると、少しの間忘れていたような感じでした本題の病院の件で、Mr−Tと設計屋さんが来ていました。病院に関してのプロジェクトももう中止にせざるを得ないとMr−Tに言い、その打ち合わせもキャンセルにしました。そして、今後のことは日本に帰ってから最終的に決めましょうと言うことになりましたが、そのときもMr−Tは顔色ひとつ替えることは無かったのでした。
(彼に出資として出した900万はどうなるのかな?・・・)

(次回 第九回に続く)
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